blueaegis GUIDE

バックオフィスSaaS

電子契約に印紙税がかからないと言われる理由:国税庁の資料で確かめた根拠と、導入前の注意点

2026-10-05 電子契約・印紙税・法人設立

結論

印紙税は、法律の別表に掲げられた「文書」にかかる税金です。国税庁の通達は、課税文書の「作成」を、用紙などに課税事項を記載し、その文書の目的に従って行使することと定めています。国税庁と福岡国税局の公表資料は、文書の現物を相手に渡さず、電子メールなどでデータを送るだけの場合について、課税文書を作成したことにはならず、印紙税の課税原因は発生しないという考え方を示しています。「電子契約には収入印紙が要らない」と言われるのは、この考え方によるものです。

ただし、この記事で確認した資料が直接扱っているのは、注文請書、請求書、領収書を電子メールやファクシミリで送る場合です。電子契約のサービス全般について一律に判定した資料ではありません。自社の運用で印紙が要るかどうかは、紙の正本を渡すかどうかなど、実際の進め方に沿って確認する必要があります。

また、同じ資料は、データを送ったあとに紙の正本を改めて渡した場合、その紙は課税文書になるとも書いています。また、印紙が要らなくなっても、契約データを保存する義務は別の法律で残ります。この記事では、根拠となる原文を順に確かめ、導入前の注意点を整理します(2026年10月5日時点、各公式ページで確認)。

根拠を原文で確かめる

1. 印紙税は「文書」にかかる

印紙税法第2条は、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する」と定めています。同法第3条は、課税文書の作成者に、その作成した課税文書について印紙税を納める義務があると定めています。

つまり、納税義務が生じるのは、課税文書を「作成」したときです。

2. 「作成」とは何か(印紙税法基本通達 第44条)

国税庁の印紙税法基本通達第44条は、「作成」を次のように定めています。

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

同条第2項は「作成の時」も定めています。相手方に交付する目的で作成される課税文書は「当該交付の時」、契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書は「当該証明の時」です。

3. メールで送った注文請書の事例(福岡国税局の文書回答事例)

福岡国税局は、平成20年10月24日付の文書回答事例で、次の照会に答えています。照会の内容は、請負契約の注文請書について、現物を交付する代わりに、PDFファイルなどの電磁的記録に変換したものを電子メールで送信した場合、課税文書を作成したことにはならないと考えてよいか、というものです。

照会者の見解は、注文請書の現物の交付がされない以上、電子メールで送信しても、ファクシミリ通信で送信した場合と同様に、課税文書を作成したことにはならず、印紙税の課税原因は発生しない、というものでした。福岡国税局は、照会に係る事実関係を前提とする限り「貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。

4. 国税庁の解説(コミットメントライン契約の問2)

国税庁の「コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」の問2は、請求書や領収書を、文書の交付に代えてファクシミリや電子メールで送る場合を扱っています。答えの要点は次の3つです。

紙の契約書なら、いくらかかるのか

比較のために、紙で作った場合の税額を2つ挙げます。いずれも国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)で確認し、国税庁の「印紙税額一覧表(令和8年6月現在)」とも一致することを確かめました。

請負に関する契約書(第2号文書)

記載された契約金額税額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
契約金額の記載のないもの200円

1,000万円を超える区分はタックスアンサー No.7102 に載っています。建設工事の請負契約書には、別に軽減措置があります。

継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)

売買取引基本契約書などが当たり、税額は1通につき4,000円です。ただし、契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めのないものは除かれます。

タックスアンサーは、印紙税は契約書に記載された内容により取扱いが異なると注意しています。自社の契約書がどの文書に当たるかは、内容に沿って確認してください。

導入前の注意点

1. 紙の正本も渡すと、その紙は課税文書になる

上の国税庁の解説と福岡国税局の文書回答事例は、どちらも、データを送信したあとに現物を別途交付した場合は、その現物が課税文書になるとしています。電子で締結した契約について、相手の求めに応じて署名や押印をした紙も渡す運用にすると、その紙には印紙が必要になる場合があります。

印紙を貼るべき課税文書に貼らなかった場合は、過怠税がかかります。タックスアンサー No.7131 によると、過怠税は当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する金額です。調査による決定を予知せずに自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます。過怠税は、その全額が法人税の損金に算入されません。

2. 文書回答事例は、照会された事実関係が前提

福岡国税局の回答には、ただし書きがあります。照会に係る事実関係が異なる場合や新たな事実が生じた場合は、回答と異なる課税関係が生じることがあること、回答は福岡国税局としての見解であり、照会者の申告内容などを拘束するものではないこと、の2点です。

この記事で確認した資料が直接扱っているのは、注文請書、請求書、領収書を電子メールやファクシミリで送る場合です。自社の契約の進め方がこれと異なり、判断に迷うときは、税務署または税理士に確認してください。

3. 契約データには保存の義務がある

電子帳簿保存法第2条第5号は、取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などに通常記載される事項(取引情報)の授受を、電磁的方式により行う取引を「電子取引」と定義しています。同法第7条は、所得税と法人税の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないと定めています。

契約書に通常記載される事項をデータでやり取りすれば、この電子取引に当たります。印紙が要らなくなる代わりに、データを要件どおりに保存する必要があります。保存の要件と、小さな法人の始め方は、電子取引データの保存、小さな法人は「事務処理規程」から始められるで整理しています。

4. 証拠としての扱いは、電子署名法第3条を確認する

電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条は、電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、その電磁的記録は真正に成立したものと推定すると定めています。ただし、条文のかっこ書きで、電子署名は「これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る」とされています。

電子契約のサービスを選ぶときは、そのサービスの電子署名がこの規定との関係でどう説明されているかを、各社の公式の説明で確認してください。印紙税がかかるかどうかと、契約の成立を後で証明できるかどうかは、別の問題です。

運営者の視点

当媒体は、小さな法人が電子契約を始めるときは、印紙代の節約額を計算する前に、「紙を併用する場面を残すかどうか」と「契約データをどこに、どう保存するか」の2つを先に決めるのがよいと考えます。理由は2つあります。1つ目は、国税庁の資料が、データを送ったあとに紙の正本を渡せばその紙は課税文書になると明記しているためです。運用が中途半端だと、印紙が必要な紙が残り、貼り忘れれば過怠税の対象になります。2つ目は、電子でやり取りした契約のデータには、電子帳簿保存法の保存義務がかかるためです。

当媒体の運営者である Blue Aegis株式会社は、2026年9月18日に、電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を取締役の決定で制定しました。契約書に通常記載される事項を電子的にやり取りすれば、そのデータは電子取引データとして保存の対象になるため、電子契約を導入する会社は、保存のルールを先に整えておくと、導入後に迷う場面が減ると考えます。

まとめ

個別の契約書が課税文書に当たるかどうか、自社の運用で印紙が必要かどうかは、税務署または税理士にご相談ください。

一次出典

本記事は公表資料と運営者の確認できた範囲に基づく整理であり、法的・税務的な助言ではありません。料金・仕様は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各社の公式情報をご確認ください。